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ビート特別編:国際スパイ博物館

by YOKO

【ワシントン発7月14日】ちょっと早めの夏休みを取り、アメリカの首都ワシントンを訪ねている。友人宅に身を寄せて、ホテル代を浮かせる貧乏旅行だが、今回の旅には、はずせない目的があった。それは…International Spy Museum(国際スパイ博物館)

 007、ミッション・インポッシブル、さらにはオースティン・パワーズと、映画に登場することの多いスパイたちだが、実際のところは、かなり謎に包まれた存在。「本物のスパイって、どんな人?」というこちらの素朴な疑問にうまく照準を合わせ、冷戦時代に激しい情報合戦を繰り広げたスパイたちが実際に使っていたツールを展示したり、著名なスパイたちが歴史の裏側で繰り広げた諜報活動を紹介したりと、こちらの興味をそそるミュージアムなのである。これが当たって、昨年オープンして以来、連日、長蛇の列ができているらしい。週末は特に人が多いので、映画館の入れ替え制のように、時間を区切って、入場制限さえしている。

 友人に頼んで、あらかじめ入場予約をしておいたのだが、指定された「午前11時」に行くと、な、なんと、すでに長蛇が!列の近くで、口笛で「007」のテーマを吹くストリートパフォーマー=写真=がちゃっかりいたりして、ぱらぱらと拍手が送られていた。一般人の入場料は13ドル〔約1500円〕だが、軍や諜報機関の関係者は、ID〔身分証〕を見せれば、1ドル割り引かれるというから、驚く。

 館内は、展示部分のほかに、「あなたも一日スパイ!」的なノリで遊べるゲームが2つあって、なかなかおもしろい。名前、年齢、国籍、生まれた場所、仕事、目的地なんかを記憶して別人になりきってみたり…ただ、ゲームの前は混み合っていて、たんのうすることができず、残念。

 さて、展示だが、充実ぶりに驚いた。口紅ケースに入ったピストル、コートのボタンの穴がレンズになっているカメラ、シガレットケースに見せかけたカメラ、変装キット、中が空洞になっているコインや折り畳み傘の柄(フィルムなんかを入れて、盗んだ情報を手渡していたらしい!)、靴底に仕かけた発信機…などなど。いったい何点置いてあったのか、よくもまあ、こんなに集めたものだなあとあきれてしまうほど。一応、「KGB」とか「CIA」といった出展元と、使われていた年代などが記載してあるが、ほとんどが1980年以前のものなので、今のスパイ活動には、差し支えのないものばかりを集めてあるのだろう。

 旧ソ連がアメリカ大使館にどのように盗聴器を仕かけ、人を潜り込ませたのか、そのからくりを図解してあるのも、おもしろい。1946年に、ソ連の子どもからアメリカ大使あてに送られてきた彫刻の中に盗聴器が仕かけてあったことがその6年後に発覚したそうだが、その彫刻のレプリカも飾ってある。こんな展示がまた、時代の移ろいを感じさせる。

 ちなみに、「スパイの歴史」コーナーには、ポーズを決めている伊賀忍者の実物大のフィギュアもあったりして、笑える。

 小道具のコーナーを過ぎると、第二次世界大戦中の日本軍、ドイツ軍が登場し、暗号の解読方法などを説明する歴史的な展示が表れる。スパイが横行した1950年代のベルリンで、西ドイツから東ドイツに通じるトンネルを掘って、東側の様子を感知しようとした「ベルリントンネル計画」については、詳細を説明していた。二重スパイだったジョージ・ブレイク(ジェームズ・ボンドと同じ、イギリスのMI6に所属)が、トンネル工事が始まる前に、この計画に関する情報を東側に漏らしていたのだが、旧ソ連側は敵方にガセネタをつかませるために、この計画を逆に利用しようと考え、知らぬ顔をしていたのだそうだ。トンネルから聞こえてくる東側の情報を、イヤホンで聞くこともできる。

 最後は、ショートムービーで締めくくる。スパイ活動は「想像力が欠落すると、失敗する」のだそうで、それが日本の真珠湾攻撃を許すような油断につながる、などと解説している。「9・11」で、WTC〔世界貿易センター〕が崩れ落ちる場面を映し、危機感を煽ることも忘れない。私の前に座っていたアメリカ人らしき女性は、映像に釘づけになって、しきりとうなずいていた。

 これだけのボリュームを一気にこなすと、足も疲れてくる。けっこう飛ばしながら見て回ったのだが、それでも見終わるまでに、ゆうに3時間はかかった。興味のある方は、ぜひ足が疲れないソフトシューズを履いて行ってください。

 隣の「スパイショップ」には、コーラの缶とか塩を入れておく容器とか、日用品に見せかけて、実は中に大事なブツを隠すことができるグッズとか、変装用のカツラやつけ歯、リップスティック型のペン、スパイ関係の本やビデオとかがそろっていて、見るだけでも楽しい。

International Spy Museum
800 F St. NW, Washington DC 20004
202・393・7798