![]() ![]() |
|
04/02/02 【ビート一覧】
松浦一樹【横浜発2月2日】仕事を終え、仕事上の付き合いを終え、横浜に戻ってきたのが、午後11時半ごろだった。柏葉のマンションにかばんを置いて、デジカメを持って、桜木町に駆けつけたころには、もう、長針と短針が重なり合おうとしていた。ぴおシティの前でタクシーを降りて、駅へと急いだ…驚いた。人の列が「野毛ちか道」の入り口付近で、とぐろを巻いていた。ざっと、数百人の長蛇だった。「桜木町」の駅名が入った切符を手に入れよう、あるいは、記念に終電に乗っておこうという横浜人の列だった。
駅が消える。大都会では、なかなか経験することができないハプニングに、人々は引きつけられていた。 改札口に近づくと、ごった返していた。終電の時刻が近づいていた。みな、あわてているようだった。構内をデジカメや携帯カメラに収めておこうという人が多かった。
線路沿いの大通りの反対側も、カメラを手に、プラットホームの方を見上げる人の列があった。終電の発車を、見ておこうという人たち。年配の人も多く、淋しそうな表情を浮かべていた。「駅がなくなると、不便だなあ」と利便性が失われることを憂えているというよりは、また街が変わってしまうことに、不安を覚えているような、そんな表情だった。 「渋谷行きの最終列車、まもなく発車します」 場内放送が聞こえてくれると、一斉にピント合わせが始まった。暗いうえに、電車までちょっと距離があるから、なかなか、照準が定まらないようだった。 プラットホームがギュウギュウ詰めになっていることが、遠くから見ていてもわかった。 電車は、人を跳ね飛ばさないように、そろりそろりと動き始め、加速すると、あっという間に、消えてしまった。シャッターチャンスを逃した人も、少なくなかったのではないか。
東急・桜木町駅。東横線は、学生時代から使っているが、桜木町駅に特別な感慨はない。ただの駅である。確かに、渋谷から戻るには、便利だった。だが、なくて困るというものでもない。横浜からは、JRも市営地下鉄も使える。路線の選択肢は減るが、ちょっと不便になるだけだ。渋谷から東横線に乗って、わざわざ野毛まで出てくる人は、もともと、あまりいなかっただろう。妙蓮寺や反町から一杯やりにきていた人たちは、困るだろうが。 にもかかわらず、消えてなくなるこの駅に、大勢の人が集まった。見慣れているものが消えてなくなってしまうことに、一抹の不安と、危機感を覚えた人たちなのではないか、と思う。 ![]() 東急・桜木町駅は、71年で、その役割を終えた。大雑把な話しではあるが、人の一生と同じくらいの長さだ。今、人の一生よりも長持ちするものが、どれだけあるだろうか。目に見えているものが、どんどん消えていってしまう。そんな世の中に、落ち着きがあるのだろうか。コロコロとその姿を変えていってしまう街に、安らぎはあるのだろうか。 「おれは、桜木町駅を知っていた」ということが、この街で暮らした証になる。だから、横浜人はカメラを手に、駅に駆けつけたのだ。 2月1日には、みなみみらい線が開通した。これに伴い、街の変化を象徴する構築物が、また、いくつも姿を現した。それらが、71年後に、残っているだろうか。 |
||||