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コネティカット通信

宇院蔵 香苗

消えたシルクハット

 【ハートフォード〔米コネティカット州〕発7月22日】私が住んでいるのはHartfordというところで、コネティカットの州都です。
 地図がお手元にあると、わかりやすいと思うのですが、ニューヨークからボストンを海岸線で結ぶと、ニューヨーク寄り3分の1のところにNew Havenがあり、そこから内陸に向かって約30分のところにHartfordがあります。「トム・ソーヤーの冒険」「ハックリベリ・フィンの冒険」などで知られるあのマーク・トウェイン(Mark Twain)が、「人生で一番幸せだった」といった1874−1891年、ここの豪邸〔The Mark Twain House〕に住んでいました。

 ティファニー(Tiffany)のステンドグラスをはめ込んだ玄関、100年物のビリヤード台、磨きこまれたエンジェルが微笑むベッドなど、今はOpen Houseになっていて、見ることができます。100年前の子どもたちのおもちゃも、まるでさっきまでそこで遊んでいたかのように置いてあって、かわいらしい!アンティークショップにどっさりと並べられていると、ちょっと怖いかな、というお人形も、窓辺にちょこんと飾ってあると、古い物とは思えないほど、表情がきれい。

 面白いのが、彼が破産する原因にもなった、グランドピアノほどもある巨大タイプライター!私も昔、英文タイプライターをカシャカシャしたことがあったんだけど、こんな大きなのを使うには、指立て伏せでもして、サンドバックたたいて、手首と指を鍛えてからじゃないと・・と思えたほどでした。

 シルクハットのジェントルと、コルセットでくびればっちりのアメリカンが行き交うメインストリート…そんな19世紀末の華やかな鉄鋼時代に、銀行と保険会社が核になって大きくなった都市で、今でもダウンタウン〔中心部〕のビル群は、金融関係がほとんど。車で20分ほど離れたところに、高級住宅がゆったりと点在しています。エリザベスパークの見事なバラ園や、木造の教会は、今でも優雅で美しいし、市の公園にある「コネティカット初の回転木馬」は、今でも子どもたちの人気を集めています。

 いろいろなものがきれいに保存されているのに、そこの通りを行き交う人たちはだいぶ変わってしまった…シルクハットは野球帽に変わり、くびれなどはとんでもない話で、日傘〔ひがさ〕を差すために使われていた左手に、生クリームこってりのアイスクリームを握りしめたおばちゃんが、信号も見ずに、道を横切ったりしている。お店の多くは入り口に禁煙マークやら、「アイスクリーム禁止」のステッカーやらが貼ってあって、妙に牧歌的な人々がいる。

 「アメリカ人の肥満をどうにかしましょう」といったテレビの特集で、最近笑ってしまったのが、「人を太らせる物を対象に税金を引き上げる」という州法改正案の話。ジャンクフード、アイスクリーム、キャンディーバーといろいろ挙げられていたけど、そんなことで肥満がなくなるという発想が不思議でしょうがない。悪法とされた「禁酒法」の時代のように、食べたい人は、高くても、闇で買ってでも、食べるでしょうから、あまり意味のないことのように思えるけど、反面、州にとってはお見事な増税作戦!とも思えたりして。

 ニューヨーク・マンハッタンでは、先月から、「レストラン・バーでは一切禁煙」というすごい法律が施行されていて、私も含め、愛煙家には厳しい「マンハッタンでの夜遊び」となったわけです。今は夏だから、店の前の出された小さなテーブルで、わいわい立ち話で、楽しく「路上蛍〔ほたる〕族」をやってますが、冬になったらどうしよう。と、空を見上げながら「自由の国アメリカはあの優雅なジェントルマンたちとともに消え去ってしまったのか?」と物思いにふけりながら、煙を吹き上げるこのごろです。

The Mark Twain House
351 Farmington Ave., Harford CT
рW60−247−0998

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