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横浜の聴き方

藤枝 好

「昔の名前で出ています」・「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」

 【横浜発11月1日】 小松左京に「流れる女」という傑作短編がある。主人公の男性が芸妓として各地を流れた女性と出会う話で、ロマンチックな怪奇譚〔たん〕である。小松には「女」シリーズという上質の短編群があって、お勧めできる(このシリーズはハルキ文庫の『くだんのはは』と『高砂幻戯』の2冊で読めます)。

 今回の2曲はいずれも<流れる女>をテーマとしていて、1975年に発売された。

 小林旭の「昔の名前で出ています」は、各地の酒場を流れる女の心情を男が唄うというパターンの曲。主人公の女性は京都から神戸へ移って横浜〔はま〕へ戻る。地名と名前の関係は次のとおりである。

  <京都:忍>→<神戸:渚>→<横浜:ひろみ>

  一番の歌詞で<京都:忍><神戸:渚>と唄って、最後の三番で初めて「ひろみ」という「昔の名前」が出てくる。巧みな構成である。横浜へは「戻った」というから、この女性の出身地は横浜なのだろう。相手の男と出会ったのが横浜なのかもしれないが、いかにも源氏名らしい京都と神戸に対して、「ひろみ」はおとなしい感じで本名という感じがする。コピーのようなタイトルも含めてよくできた歌である。 「昔の名前……」が流れていく女の一人称であるのに対して、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」(ダウンタウン・ブギウギ・バンド)は流れる女を追う男の歌である。<間接話法>というか、男が訪ねる相手のセリフによってストーリーが展開する。曲の大半が歌ではなくて<語り>なので、シンプルに見えるが、セリフの質の高さなども含め、構造的には相当凝っている。

 京都出身の宇崎竜童がいかにも<ヨコハマ・ヨコスカ>あたりという感じでセリフを回す。作家の小林信彦が漫才コンビを役者型人間と漫才型人間に分類したことがあった(例:西川きよし=役者型、横山やすし=漫才型)。宇崎は1978年にATGの映画「曾根崎心中」に主演したように、役者型ミュージシャンなのだろう。その後の映画出演も多い。

 <語り>が終わった後に、バンドがためていた力を一気に発散するラストの演奏には、ロック特有のカタルシスがある。宇崎竜童(とダウンタウン・ブギウギ・バンド)については、あらためて書くことがあると思う。(文中敬称略)(03・10・09)