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ズージャグラフィー〔横浜ジャズ〕

吉元哲

Avant Jungle Garden

 【横浜発1月26日】雪がちらついた土曜日、吉田橋〔中区〕のライブハウス『リトルジョン』に出かけた。 この日の出演者は『Avant Jungle Garden』というDuo(二人組)のユニット。気鋭のサックス奏者、松本健一が客演した。

 このユニットは昨年6月、シャンソン歌手・福田ワサブローのライブに出演していた野村おさむに、尾山修一が声をかけたことから始まった即興音楽Duo。2人とも多くの楽器を扱うため、ステージ上がジャングル状態になることから、前衛を意味する「Avant−garde」〔アバンギャルド〕に「Jungle」を挟み、音が広がる庭(Garden)のようなステージにしたい、という意味を込めて、言葉遊び的に命名した。

 年長の尾山修一がサックス(ソプラノ、テナー、バリトン、それから名付けようがないサックスも…)と、金属片やらゴチャゴチャと音の出るものを、何でも並べている。野村おさむは、大きいマリンバを前面に据えて、ドラムセットに座り、周りには銅鑼やら見たこともないパーカッションを並べていた。この二人の楽器だけでライブハウスのスペース半分を占領しているので、観客は隅のほうに追いやられる。

 なんとも、不思議な演奏会である。内容はすべて即興。一曲の演奏時間は約40分。濃密で申し分のない出来だった。

 尾山修一という演奏家は、1994年からクリエィティブ・イン・ホドガヤという、年に1回の現代音楽イベントを続けてきた、知る人ぞ知る横浜の傑物だ。初めてお会いしたのが、32、3年前だから、音楽活動歴は長い。前衛舞踏の第一人者、大野一雄や、朗読の白石かずこらとのコラボレーションも活発だ。

 一方、野村おさむは、国立音楽大学を卒業後、多彩な打楽器を操るマルチパーカッショニストとして、小・中学校の音楽鑑賞教室から、ライブハウス、ジャズクラブ、大小のホール、ホテルのディナーショーに至るまで、多種多様なステージを踏んできた。杉田〔磯子区〕在住で、最近、第二子が生まれたばかり。

 前置きが長くなってしまったが、肝心の演奏は、なんというべきか、説明が難しい。

 ジャズのライブハウスで演奏しているからジャズなのか?しかし、一定のリズム・パターンが見つからない、長調や短調どころか、音階すら否定したメロディとしか言いようがないが、面白い。現代音楽なのか?と見当をつけて楽しむよりほかはない。尾山のテナーサックスからは、生木をむしるような湿った刺激的な音が、高低ないまぜに、奔流となって出てくるのだが、なぜか、耳にやさしい。パーカッションの野村は、千手観音よろしく、ドラムセットの中央で、後ろの銅鑼、右の音程ドラム(?)、左のジャンベ(アフリカの民族ドラム)にと手を伸ばし、忙しいこと、このうえない。

 この二人に挟まれて、客演の松本健一は演奏開始のクラリネットを吹く。これがまた、二人を挑発するような不思議な効果音となっている。注意してみると、最低音と最高音が瞬時に入れ替わるような、ずいぶんと難しそうなことを延々とやっている。何がナニやら、わけがわからない雑音かと思われそうだが、全体はふんわかとまとまってまぁ、アンサンブルといえなくもない。そして飛び切り、スリリングだ。

 どうやらクラシックだ、ポップスだ、ジャズだ、ロックだと言っているのは、半可通の知ったかぶりかと、眼からウロコ、否、耳からウロコが落ちる思いだった。

 休憩時間中の尾山修一さんに話をうかがった。

 「そう、この10年くらい、やってきて、ようやく、理解してくれる人が少し増えてきました」

 地下鉄の延伸を記念して、馬車道〔中区〕で2月1日に、昼間は路上パフォーマンス、夜は茶房「サモワール」で、フリージャズの草分けのひとり、豊住芳三郎らとライブを開催するという。

 また、アマチュアも含めたワークショップの構想も語ってくれた。

 商業的には全く、取るに足らないムーヴメントだが、こういう活動が音楽の主流を支えていることは、歴史的な事実だ。こういった音楽が生まれてくる環境を保持できることが、文化的な都市の証ではないだろうか。

 注:トップページの写真は尾山(ソプラノ)、松本(テナーサックス)、野村(パーカッション)

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